高齢成熟社会では生活者の移動に新しい社会的ニーズと新しい需要が生まれている。
本当は福祉バスがいいが、普通の自治体ではほとんど運行していない。高齢成熟社会になると、一人暮らしの老人が急速に増える。
国勢調査(2000年)によると、4700万世帯のうち300万世帯は65歳以上の一人暮らし世帯だが、20年後には一人暮らしの老人世帯は1000万世帯を超えると予想される。こうした高齢成熟社会の交通システムをどう設計するか。
高齢生活者のニーズに合った新たな交通モ−ドが必要とされている。旧来の生活者移動手段(交通モ−ド)は、道路運送法に規定のあるタクシーである。
ハイヤーは大都市にはないし、東京でハイヤーを一日頼むと五万円にもなるなど高過ぎる。バスは固定ル−トと定時輸送のため、高齢者にとってはサービスが限定的である。
もう少し目的地の近くまで行きたいし、自由に乗り降りしたいが、バスはそれができない。タクシーは便利だが、「距離料金制」という点に問題がある。実は距離料金制でというのは、サラリーマン産業社会のビジネスモデルである。
距離料金制では、日中に町の中を走ってもほとんど儲からない。それよりも夜に一万円以上になる遠距離のお客を捕まえた方が、効率がいい。
高額の料金を払える人はそんなにいないから、会社のタクシー券制度がなければ成り立たない話である。高度成長時代にはどの会社もタクシー券を出したから、タクシー産業は伸びたが、いまでは多くの会社がタクシー券の支給をやめているので、タクシー業界は経営が苦しくなってきている。
それから流しというのは、都会で働くサラリーマンや買い物客のためのモデルとしか考えられない。サラリーマンはどこを歩いていても車を止めたかったらパッと手を挙げる。
買い物客もそうである。タクシーはそのために流しをしている。
流しというのはガソリン代がかかり、空気も汚すし、運転手も疲れる代物だが、動き回っているサラリーマンや買い物客にとっては便利なビジネスモデルなのである。運転手の二四時間交替制というのも、人件費が安く、車やガス代が高かった時代の遺物である。
車を休ませるともったいないから二四時間稼働させるというわけである。いまは逆で、一番高いのは人間である。
このように現行のタクシー産業のモデルは、利用者にとっても事業者や運転者にとっても矛盾と欠陥が多い。
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